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生産者インタビュー〜岡山県倉敷市のワイナリー GRAPE SHIP(グレープ・シップ)松井 一智〜

ぶどうと共に続く航海

仕事での信条はありますか
加藤:

これは以信伝心に出演されている皆様にお尋ねしています。私自身も、質問されたら一番答えにくいと思います。

松井:

今回のお話をいただいた際に、過去のインタビューを見たので同じことは言えないですね(笑)考えましたが、簡潔に伝えるのが難しいなと感じています。

加藤:

今までの方々も内容は違いますが、本質的な部分は似ているように思いますよ。

松井:

面倒を理由にして辞めないように心掛けています。前述しましたぶどうの害虫駆除もやっているとキリがありませんが、より良いぶどうを収穫するためには手を抜きません。また「果実の灰でうつわを作る」際に使用する灰も、次に渡す作家さんが美しい器に仕上がるように、きちんと灰を燃やすようにします。

加藤:

素晴らしい心掛けですね。ただ…松井さんのお話を聞いていると、早朝から休む間もなく働いているように感じますが、心身ともに疲れたりしませんか。

松井:

ワイン造りをしながら食用ぶどうも管理しているので、近所の農家さんからも同じようなことを言われたことがあります。ただ、畑仕事は果てしないものです。でも、昔から畑仕事が大好きなので、苦にはなりません。趣味と仕事が一緒なんだと思います。これからも、より良いぶどうを育てるために、惜しみなく全力を注いでいきます。

加藤:

ヴィニュロンの鏡のようなお言葉ですね。今回はご多忙の中にも関わらず、貴重なお話と醸造設備のご案内にワインテイスティングと貴重なお時間をいただきまして、本当にありがとうございました。

あとがき

岡山県倉敷市船穂町の豊かな自然と伝統の中で育まれたマスカット・オブ・アレキサンドリアと、それを最大限に生かしたナチュラルワイン造りに情熱を注ぐ姿を目の当たりにしました。GRAPE SHIPのワインには、この地に根付いた技術と知恵が結晶しており、それらを次世代へと渡す一つの形だと感じました。

これからも彼らの努力と情熱が、岡山県のマスカット・オブ・アレキサンドリアを一層輝かせることでしょう。その魅力を一人でも多くの方に伝えることで、この地のワインが持つ豊かな味わいと歴史を共に楽しむことができれば嬉しく思います。

また、松井さんが手掛けたマスカット・オブ・アレキサンドリアは、某有名百貨店などでも取り扱われています。お酒が飲めない方々も、食用のフルーツとして、もしくは別の形でマスカット・オブ・アレキサンドリアに触れているかもしれません。ワイン造りに限らず、物造りには思いが込められていることを改めて思い返すことができたインタビューとなりました。生産者の松井さん、ご多忙の中快く素晴らしいお話をしてくださったことに感謝いたします。次はゆっくりと岡山を訪れたいと思います。

インタビュー:加藤 雅也/文:升田 浩輔/撮影:浦川 なお

-GRAPE SHIP(グレープ・シップ)-
mellow[2023](メロウ)

松井さんからのコメント

2023年は梅雨の期間が長かったため病果が多くなり、収穫量が2022年と比べ少 なくなった年でした。病果を外すことで全体の収穫量が減りましたが、ぶどう一つ一つに凝縮感が生まれ、初秋は天候に恵まれたため、結果的に良い年となりました。 このワインは今後、私たちのチャレンジワインとしてリリースしていく予定です。 毎年違った味をお届けしたいと思っておりますのでよろしくお願いいたします。ワインを通じてマスカット・オブ・アレキサンドリアの可能性をもっと広めていきたい、多くの人に知ってほしい。そんな想いをこめてワイン造りに今後も取り組んでまいります。

この記事のインタビュアーは・・・

加藤 雅也 -Kato Masaya-

鳥取県出身。ホテルオークラ東京(現TheOkuraTokyo)で当時、国内随一の人気と格式のあるフレンチレストランLaBelleEpoqueにてサービスに従事。数々の海外星付きシェフのフェアなど経験し、フランス料理の神髄とサービスマンとしての振舞いを学ぶ。その後、丸の内再開発プロジェクトとしてOPENした、ミクニ・マルノウチにてソムリエに就任し、当時PP100点のボルドー ワインを全てオンリストするなどして話題に。そして若手ソムリエコンクール(当時25歳以下)にてファイナリストを経験。ソムリエとして更なる飛躍を目指し、当時パリ一つ星「STELLA MARIS」 の吉野建氏が東京にOPENした「tateru yoshino」のソムリエに就任。 現在は、信濃屋のワインバイヤーとして、ソムリエとしての経験と世界11ヶ国のワイン生産地を訪れた現地での情報を基に、ビギナーからプロフェッショナルまで楽しめるワインショップとして業界で注目され続けている。 また人と人との出会いを大切に、オン・オフのマーケットの交流とリテールに携わる人々の社会的な向上をはかり広く社会へ貢献することをモットーに日々奮闘中。

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