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新世界オーストラリアワインの魅力「進化と変革」

ファームストン株式会社 執行役員

青木 雅彦-Aoki Masahiko-

Profileプロフィール

三重県伊勢市出身。大学にて世界の都市デザインについて学び、ゼミにてイタリアワインの魅力に触れる。一度は建築家としての道を歩むが、どうしてもワインを忘れられず山梨のワイン・地酒を扱う業務卸/卸の役員となる。山梨での14年の間には「グリ・ド・甲州」の企画/発売に携わる。世界のワインと食のマリアージュについてもっと深く勉強をする為に、全国業務食材酒類卸の高瀬物産商品本部酒類部に転職。在職の15年間で東京都内を中心に全国のホテル・レストランの開拓担当を行う。又、バイヤーとして10数回に及びイタリア・フランス各ワイナリーに直接訪問。(一番印象に残っていること:フランスのアルザスにあるマルセル・ダイスの当時オーナー:ミッシェル・ダイス氏の遠く光輝く世界を夢見る目とアルザスの土にて黒光りしていた爪)シャンパーニュの生産者セドリック・ブシャールの直接輸入にも携わる。2014年にオーストラリア専門商社ファームストンに入社。進化し続けるオーストラリアワインに最後のワイン人生を掛ける。
一言コメント:補糖を一切行わないピュアな自然派ワイン/クリーンな熟成を楽しめるスクリューキャップなどこれからも素直に美味しいワインをご提案してまいります。

青木 雅彦を紐解くキーワード

最初に〜今回のインタビューを行った背景〜

昨今、人気ワイン産地の価格高騰が急加速している。ブルゴーニュやカリフォルニアなど異常気象による生産量の減少により品薄が大きな要因にあるが、そこに拍車をかけるように世界情勢も近年目まぐるしく変化が起こっている。

ロシアのウクライナ侵攻によって、原油が高騰。更には資材であるボトル、紙資材(キャップやラベルなど)などワインにまつわる必要不可欠な資材の値上がりが深刻な問題となっている。

今回インタビューを行うのは、オーストラリア専門商社ファームストン様。ブルゴーニュやカリフォルニアに代わる産地として高い注目を集める新世界・オーストラリア。独自の多様性や、高い普及率を誇りコルク栓に代わる「スクリューキャップ」の見解、世代の若い造り手達を中心に巻き起こっている「ナチュラル・ワイン・ムーヴメント」などの観点から『ワインの新しい景色』を読者の皆様と一緒に見ていきたいと思います。

オーストラリアワインの魅力を情熱を持って伝えていきたい

撮影場所:ファームストン本社
左:信濃屋バイヤー 加藤/右:ファームストン 青木
今回のインタビューにあたりどのような想いを届けたいですか
青木 雅彦(以下、青木):

レストランの方々へは徐々にオーストラリアワインの魅力が伝わってきている印象はありますが、ワイン専門店ではまだまだオーストラリア(スクリューキャップ)=安いワインのようなイメージが強いように感じます。そこを今回のインタビューを通じて、オーストラリアワインの魅力を多くの方々に伝えていきたいと思っております。また、ワイン専門店でも信濃屋の加藤バイヤーのような経歴(ソムリエ経験者)の方がワインバイヤーとしてトップに立っている意味の大きさをとても強く感じております。そこから発信することが出来ることを嬉しく思います。

加藤 雅也(以下、加藤:

ありがとうございます。確か…スクリューキャップが普及し始めたのが、私がソムリエをしている2000年代頃だったかと思います。その頃にコルク栓のように、如何にスクリューキャップワインをカッコ良く抜栓するかを考えたものです(笑)昔は受け入れにくい時代もありましたが…今こそ、その魅力を改めて信濃屋が発信していきたいなと思います。本日はよろしくお願いいたします。

オーストラリアワイン専門の輸入商社は珍しいように思います。設立の経緯はどのようなものなのでしょうか
青木:

ファームストンの代表・石田が西オーストラリア州のパースでワインを飲んで過ごしていた時期があります。その当時はオーストラリアワインを購入する機会がなかったので『自分が飲みたいがために商売をする』のが良いのではないかと決起したようです。

加藤:

思ったことを実際に行動に移せるのが素晴らしいですね。新しい事をする際は周囲も『そんなの売れるの…?』など半信半疑の声もあったと予測できる中、信念を貫いた結果が実を結んだのですね。

オーストラリアワインの魅力

オーストラリア国内ではどのようなワインが支持されていますか
青木:

オーストラリアの国民は自国のワインをよく飲みます。物価も収入も高い国ですので、レストランで若いカップルなどでも普通に10,000円以上払います。なので安いとは言えない価格帯の自然派ワインが人気なのは、このような背景もあるのかもしれません。

オーストラリアワイン専門の輸入商社として対峙するレストランの印象とワイン専門店の印象は違いますか
青木:

冒頭に触れたとおりワイン専門店ですと、未だにスクリューキャップワイン=安価なワインのイメージが強い印象にあります。レストランの方々は昨今の人気生産地の価格高騰によりワインリストを柔軟に対応している部分で、大きな温度差を感じております。

加藤:

我々もお客様にワインを販売する中で、価格高騰は痛感しております。その中でオーストラリアワインは新しい選択肢に取って代わる産地の一つではあると思います。今はオーストラリアの産地やテロワールをしっかりとお伝えできるお店は多くないのかもしれません。ひとまとめで『オーストラリアワイン』ではなく、しっかりと我々ワイン専門店がオーストラリアワインを理解することでお客様にその魅力を伝えていけるようにしていきたいなと思います。

オーストラリアでは既に9割以上がスクリューキャップのワインですが、現地ではスクリューキャップワインに対する印象はどのようなものでしょうか
青木:

もともとスクリューキャップで進化を遂げてきているので、オーストラリアではスクリューキャップが生活の中に溶け込んでいます。輸入ワイン(コルク栓)を楽しまないという訳ではなく、スクリューキャップの可能性を十分に理解したうえで楽しんでいる印象があります。日々進化をしているので、液面と接するシリコンなど細かい部分も変化を遂げてきています。

加藤:

20年前は受け入れがたい時代もありましたが…今は日常的にスクリューキャップのワインを目にする機会が増えましたよね。ワイン専門店からの観点で言えば、あまりネガティブなところはないです。安心して買えますし、どなたでも簡単に開けられて管理も出来るので、非常に親しみやすいワインだなという印象です。

スクリューキャップの利点とは何ですか
青木:

高価なワインはコルク栓が多いです。そういったワインがブショネ(※1)になったとしたら非常に残念な思いをすると思います。スクリューキャップであれば、そのリスクを回避することができるのは大きな利点です。コルクと同様にスクリューキャップも熟成しますし、綺麗な熟成を経ていけるのがとても魅力的だと思います。

※1ブショネとは…汚染されたコルクによりワインの品質が劣化する現象のこと。

近年、ナチュラルワインブームに湧いていますが、ファームストンが提唱するクリーンナチュラルというワインカテゴリーを説明していただけますか
青木:

個人的には自然派ワインの酸化・還元や瓶の個体差があるのも面白いと思います。ただ、このワインが本当に純粋に美味しいかが基準にあります。酸化・還元が起因してワインの良さが消されたりするのは残念なので、そうではなく品種の個性やテロワールをクリーンでピュアに表現されるワインという意味を込めてクリーンナチュラルと称しております。

加藤:

信濃屋でも取り組ませていただいております。ただ、時代によって考え方や捉え方が変わってきてると感じます。昔は還元や酸化もネガティブに捉えられていましたが、今はそれをどのように楽しもうかと捉えられるように変化してきていますね。ワインを良し悪し言うのではなく、飲み方や料理との相性などと提案することでその個性を最大限に引き出すことを考えるとワインをより楽しく飲めるのではないかなと思います。

ファームストン激押し オーストラリアワイン