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挑戦する情熱とプロフェッショナリズムからの学び

プロサッカー選手

都倉 賢-Tokura Ken-

Profileプロフィール

2005年に川崎フロンターレでプロデビュー。大きな身長を活かしたダイナミックなプレーと、当たり負けないフィジカルの強さが特徴。跳躍力が強く、空中戦では負け無し。豪快なバイシクルシュートで観客を魅了する。2019年に全治8カ月の大ケガを負った際、SNSで使用したハッシュタグ「#返り咲きカウントダウン」が話題に。また、現役Jリーガーとして初めてワイナリーオーナーとなり、北海道の仁木町で「都倉ワイナリー」を経営していた。2023年にはセカンドキャリアをサポートする会社のCOOに就任するなど、挑戦を続け、サッカー以外でも多くの人々に影響を与え続けている。

都倉 賢を紐解くコンテンツとキーワード

公式インスタグラム
公式X

最初に〜今回のインタビューを行った背景〜

都倉氏は現役プロサッカー選手でありながら、異業種のビジネスにも挑戦する唯一無二な個性を持つ人物。その挑戦する情熱とプロフェッショナリズムは、彼の人生を縦横無尽に彩ってきた。「都倉 賢」の名前をサッカーやスポーツ業界だけでなく、ワイン業界の舞台でも聞くことになるとは想像もしていなかった。

「都倉 賢」の日々は挑戦と努力で満ちている。現役サッカー選手としてのトレーニングや試合に費やす時間は非常に多いが、その一方で彼はワインの魅力にも惹かれ、その探求にも一切の妥協はない。どちらの世界においても、常に最高のパフォーマンスを求め、情熱とプロフェッショナリズムを持って挑戦してきた。

このインタビューでは「都倉 賢」の挑戦する情熱とプロフェッショナリズムに焦点を当て、彼がどのようにして両方の世界で成功を収めてきたのかを探ってみた。現役サッカー選手としての挑戦が、ワイン業界やワインラヴァーにどのような影響を与えたのか…そして彼が直面した困難や乗り越えた障壁についても赤裸々に語ってもらった。

今回のインタビューを通じて、情熱とプロフェッショナリズムがどのようにして育まれ、ワインを通して何を伝えたいのかを届けたいと思う。

現役サッカー選手としてワイン造りへの挑戦

お付き合いが始まる前から信濃屋のことをご存知でしたか
都倉 賢(以下、都倉):

最初は存じ上げなかったのですが…初めて加藤さんからご連絡いただき調べてみたところ、都内に多数の店舗を展開していることに驚きました。加藤さんとの最初のやり取りが印象的で、鮮明に覚えていますよ。

加藤 雅也(以下、加藤):

ありがとうございます。私からのご連絡後、返信までに半年ほどの期間が空いたため、そのことを少し忘れかけていた時に突然メールが届き、私も驚きました。「あれ?本人かな…」と思ったものです(笑)当時はコロナ禍もあり、Zoomでお会いするまでは半信半疑の気持ちでした。ご返答いただき感謝しています。

都倉:

返信が遅れてしまい申し訳ありませんでした。シーズン中は忙しく、メールだとスパムも多く、その中に埋もれてしまっておりました。しかし、たまにメールフォルダを見返す時期があり、その際に日付を確認したら半年後くらいだったと思いますが、返信させていただきました。当初、私の考えでは、クラウドファンディングと自分のオフィシャルサイトを通じてワインを販売することだけを考えていました。”卸す”という考えがまったく頭にありませんでした。その中で、実績もない私にご提案いただけて、とても嬉しかったことを覚えています。

加藤:

そのようなきっかけで”今”があるので、私たちもとても嬉しいです。

シーズンオフに東京世田谷区の信濃屋ワイン館まで足を運んでくださいましたが、店頭をご覧になられた印象は覚えていますか
都倉:

ワインの多様性も印象的でしたし、世界各国のワインが所狭しと並ぶ光景にとてもワクワクしました。その後、シーズンオフに友人と一緒に豊洲でフットサルを楽しんだ際に、会食用のシャンパーニュを豊洲店で購入させていただきました。

加藤:

ありがとうございます。最近では、虎ノ門ヒルズと六本木ヒルズにも新しいショップをオープンしました。東京にお越しの際は、ぜひ足を運んでみてください。

都倉:

場所ごとにコンセプトが異なるので、東京へ行く楽しみの一つにしておきます。

信濃屋の店舗案内

左:都倉 賢氏 右:信濃屋 加藤
奥に映るボトルは都倉氏が造ったワイン「KAERIZAKI」

SNSで生まれたワインの奇跡

なぜワイン造りに挑戦したのでしょうか
都倉:

挑戦したきっかけは、SNSでぽろっと発信したことが始まりです。サッカー好きなら覚えているかもしれませんが、2018年に、世界最高の選手と言われていたスペインのイニエスタ選手が日本へ移籍するという衝撃的なニュースが飛び込みました。

加藤:

私もサッカーが好きなので、その話題は覚えています。コロナ禍での難しいシーズン中でも、明るい話題を届けてくれましたね。

都倉:

イニエスタ選手がスペインでワイナリーを経営していたのを知っていました。彼が来日する少し前に、よく行く鉄板焼き屋の大将が「景気付けに、イニエスタのワイン飲んでみるか」と、私たち家族にそのワインを出してくれました。お酒が入っていた私は、その時、鉄板焼き屋の椅子の上から「サッカーでは雲の上の存在だけど、ワイン造りではワンチャン勝てるのでは?」そんなことを投稿してしまったのです。この時は想像もしていませんでしたが、翌朝起きると、この投稿がWEBニュースのトップになっていました(笑)

加藤:

すごいですね!!しかし、お酒が入った状態でSNSを利用するのは控えたほうが良いかもしれませんね(笑)そのようなニュースが取り上げられると、各方面からご提案が来たのではないのでしょうか。

都倉:

嬉しいことに、ワイン関係者からいくつかのご提案をいただきました。その中で、ワイン造りにおいてパートナーとなる※1「ヴィニャ・デ・オロ・ボデガ」の金田さんと出会いました。

※1 ヴィニャ・デ・オロ・ボデガ詳細はこちら

イニエスタ選手のワイン「コラソン・ロコ」を実際に飲まれた感想はいかがでしたか
都倉:

私もまだまだワインの本質を理解できていないので、意見をすることはおこがましいかもしれませんが…イニエスタ選手は難しいパスが来ても、それを難なくさばき、仲間に良いパスを送る姿が鮮明に記憶に残っています。それと彼のワインが自身の頭の中でリンクして、そういうワインなんだと感じながら飲んでいたら、とても楽しかったのを覚えています。彼のワインから、ワインの楽しさを再認識し、やはりワインはグローバルな文化だと感じました。

加藤:

私もサッカーをしていた経験があるので、面白い解釈ができて楽しいです。イニエスタ選手とはワインに対する意見交換をしたことがありますか。

都倉:

意見交換とまではいきませんでしたが、ワインの話題に触れたことがあります。それは私がワインをリリースした後、開幕戦前に行われるキックオフカンファレンスというイベントでのことでした。当時、私はセレッソ大阪に在籍しており、キックオフカンファレンスにはセレッソ大阪代表として参加していました。もちろんイニエスタ選手はヴィッセル神戸の代表としてその場にいました。

加藤:

キックオフカンファレンスはプロサッカーリーグの前夜祭のようなイベントで、各チームの監督や代表選手が参加し、メディアにも大々的に扱われる催しですね。ニュースには取り上げられない裏話、お聞かせください。

都倉:

そこで代表選手が集まっての写真撮影や対談がある中で、私がワイン事業をやっていることを伝えると…「開幕戦に勝たせてくれたら、ワインを1ダース贈るよ」と冗談を言ってきたのを覚えています(笑)

加藤:

イニエスタ選手ほどのステータスになれば、スペインへのご招待と言っても冗談に聞こえないかもしれません(笑)しかし、ワインを造っている同士だから言い合えるエピソードでしたね。

ボデガ・イニエスタ詳細はこちら

印象に残っているワインはありますか
都倉:

銘柄にこだわることはありませんが、個人的にはシャンパーニュが特に好きですね(笑)あとは、訪れるお店の雰囲気によって選びます。イタリアンに行けばイタリアワインを楽しんだり、将来的には世界のワイナリーを巡ることが夢なので、その時々の雰囲気に合わせて楽しんでいます。

加藤:

シーズン中は節制されていると思いますが、シーズンオフになると奥様やチームメイトの方ともワインを楽しむことがありますか。

都倉:

はい、飲みますよ。元々北海道コンサドーレ札幌時代に、小野 伸二さんにはとてもお世話になりました。よくご飯に連れていってくださり、その際に一緒にワインを楽しむことがありました。小野さんと出会っていなければ、今ほどワインを好きになっていなかったと思います。

加藤:

確かに、クラウドファンディングの「応援メッセージ」に小野 伸二さんからのメッセージがあったのを記憶しています。

都倉:

あと初めてワインが美味しいと思った瞬間は、今でも鮮明に蘇りますね。24,5歳の時、シーズンオフに1週間スペインのチームに練習参加し、ホームステイをしました。滞在先のマドリードで、ホームステイ先の母親が郷土料理と生ハムやサラダを出してくれ、テーブルの上には当たり前のようにワインが置かれていました。今までワインが全く美味しいと思ったことがなかったのですが、そのワインとハモンセラーノを食べた時、それがマリアージュを体験した瞬間だったのだと思います。

加藤:

異国の地で挑戦している都倉さんに対するホームステイ先のおもてなしの心や、都倉さんの心情が重なり合い、鮮明に記憶に残ったのかもしれませんね。

都倉:

今でもテンプラニーリョを飲むと、当時の思い出が蘇ります。「土と太陽の香り」。その土地の温かさと、太陽の光が込められた香りが、私の中には今も色あせることなく残っています。

加藤:

私も仕事柄、様々な国でワインを飲む機会があるので分かります。ソーヴィニョン・ブランを飲むと、あの特定の光景が鮮やかに脳裏に浮かび上がります。そのワインの香りや味わいが、その時の感覚を呼び覚ますのでしょうね。