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挑戦する情熱とプロフェッショナリズムからの学び

サッカー選手が踏み入れるワインのフィールド

なぜ北海道という土地を選んだのでしょうか
都倉:

当時、私が北海道コンサドーレ札幌に在籍していた時のチームメイトに、ユース時代に金田さんと先輩後輩という関係の仲間がいました。その縁で、金田さんと私を繋いでくれたのがパートナーシップを組むきっかけとなりました。彼も元々サンフレッチェ広島ユースでサッカーをしており、プロを目指しながら大学に通っていました。その在籍中に大きな怪我をしてしまい、大学卒業とともに地元山口県の※2山口ワイナリーにて栽培・醸造を学び、ワイナリーを開業しました。これが私が彼と気が合った要因の一つかもしれません。

加藤:

サッカーで繋がる”ワインの縁”も素敵ですね。金田さんからお話をいただいた際には「ヴィニャ・デ・オロ・ボデガ」のワインを飲みながらパートナーシップを結ぶ話し合いを行ったのでしょうか。

都倉:

実は「飲んでください」とかもなく…(笑)彼もまだ2015年に独立したばかりで、お互いワイン業界では何者でもない同士が熱量だけで「よし、やろう!!」と勢いでスタートしたのを覚えてます。

加藤:

タイミングよく仁木町が※3ワイン特区に認定された時期に重なりますね。

都倉:

そうですね。今では本当にタイミングが良かったなと感じます。当時は知らないことが多く、ワイナリーを開業する決意をしてから、ワイン造りのことはもちろん、法律なども勉強して、開業に向けて課題を一つ一つクリアしていきました。

加藤:

「ヴィニャ・デ・オロ・ボデガ」の金田さんとパートナーシップを組んだ最終的な決め手は何でしたか。

都倉:

ワイン関係者からいくつかのご提案をいただいた案件の多くは、※4ワインのOEMやプロデュースという話でした。しかし、私は「一番ストーリーを語れるアルコール」がワインだと思っています。ワインに対しては何者でもない私でしたが…そんな思いから、やはりワインは畑からやらないと何も語れないなという気持ちがありました。その本質的な部分を共有できた金田さんに惹かれたのだと思います。

※2 山口ワイナリー詳細はこちら

※3 ワイン特区とは…ワイン特区とは、酒税法の最低製造数量基準を特例措置によって緩和し、ワイン製造に参入しやすくなる区域のことを指します。

※4 ワインのOEMとは…この場合、都倉氏が自社のブランドとしてワインを提供するために、ワインメーカーは都倉氏の要件に基づいてワインを生産し、オリジナルのラベルを貼り、瓶詰めを行います。そして、都倉氏のブランド名でワインが世間に流通します。

都倉氏が造ったワイン「KAERIZAKI 2020/2021」
ナチュラルワインを造ろうと思った理由は何ですか
都倉:

味わいの方向性は、私と金田さんはもちろん。ワインに精通している飲食店オーナーや知人のソムリエにも協力してもらいました。方向性を決める際に、サンプルとして日本ワインを多数テイスティングしました。その中でワインの方向性を示してくれた印象的な1本が産地や品種、味わいを決定づけるイメージを与えてくれました。

加藤:

ワイン特区の認定を受けたことにより、原料の制限なども限られる中での模索となったのではないでしょうか。

都倉:

そうですね。ブドウがしっかりと生育するまでには約5年かかるため、原料の調達は難しかったです。また、その地域で作られるブドウしか使用できない制約もありましたが、それでも自分らしさをしっかりと表現できるよう努めました。

加藤:

「ヴィニャ・デ・オロ・ボデガ」の金田さんがナイアガラでもワインを造っていましたから、やはり意図的に方向性を選択していたのですね。

都倉:

金田さんが元々ナイアガラでワイン造りを行っていたことから、ナイアガラの雰囲気は理解していたつもりでした。しかし「ヴィニャ・デ・オロ・ボデガ」に委託醸造して似たようなワインを造っても、面白みに欠けると感じました。その時にヒントになったのが、自分の中でワインの方向性を示してくれた印象的な1本でした。それがナイアガラとキャンベルを使用していたので、皆さんの知恵も借りながらブドウの割合を変えたりなど、自分のワインを追求していくことができました。

ワイン造りをしていて一番思い出に残っていることはありますか
都倉:

すごい駆け抜けた5年間でした。しかし、3ヴィンテージのリリースを経験しましたが、毎年同じように造っても全く違うワインに仕上がっていくのがとても面白いと感じました。1年目と2年目の反省を活かして、この2年間の蓄積があってリリースした3年目は狙い通りに造れたなと満足感も得ることができました。

加藤:

その年を象徴する味わいを表現することができれば、ヴィンテージごとの違いを楽しむこともワインの魅力だと思います。

都倉:

飲むのは面白いとは思うのですが…1年に1回しか造ることができない難しさを痛感しました。それを造っている生産者の努力や匠の技術も素晴らしいですが、ワインの歴史が積み重なったからこそのワイン造りというのを感じることができました。

ワインを造る前と、今とではワインに対する価値観が変わったのではないでしょうか
都倉:

生産者の苦労を考えるようになりました。

加藤:

言葉の重みが違いますね。ワイン造りをしていたからこそ思うところがあるのでしょうね。では、逆に変わらない部分やもっと好きになった側面はありますか。

都倉:

今も変わらず、ワインに惹かれる理由の一つが「飲む前から楽しい」という点がワインの一番の魅力だと思います。ワインを選ぶときは、その場の雰囲気や料理などを考慮して、その空間の最適解をワインで出すのもとても楽しくて好きです。あとは、例えばホームパーティーに呼ばれた際、集まるメンバーや食事の席を想像しながら選ぶワインも「飲む前から楽しい」瞬間だと思います。もちろん、他のお酒にも魅力はありますが…私が体験した「飲む前から楽しい」という感覚を今でも変わらずに実感できることが、ワインの一番の魅力だと思います。

加藤:

仰る通りだと思います。私たちは実店舗で、まさに「飲む前から楽しい」瞬間に携わることができるので、その魅力を理解できます。また、先ほどの話にもありましたが、味わいも毎年変わる楽しみがありますよね。そして、抜栓してから飲んでいる間も味わいは変化します。ワインは本当に魅力が多いのかもしれませんね。

今後の日本ワインに期待することはありますか
都倉:

ワインの生産者数は増えていくと考えられますが、海外のワインを模倣する傾向は減少する可能性があると予想しています。フランスやイタリアなどのワイン先進国に比べて、日本のワイン産業は歴史が浅いものの、日本のものづくり文化は世界的に高い評価を受けています。今後は、その土地に適した品種や栽培方法、生産者の個性を反映した日本のワイン造りがさらに進んでいくことを期待しています。

加藤:

ジャンルは違いますが、ジャパニーズウイスキーも世界に誇るお酒になったことは、日本の醸造技術への信頼を世界に示した良い例かもしれませんね。ちなみに、日本ワインで印象に残っているワインはありますか。

都倉:

※5グレープリパブリックや※6ココ・ファーム・ワイナリーは印象に残っています。あとは、菊鹿ワインのシャルドネはブラインドで飲んで、その高品質に驚きました。

加藤:

既に、日本ワインも世界に引けを取らない品質を誇っています。私たちも、生産国や品種に囚われることなくワインをより楽しむ文化を広めるために努力していきたいと思います。

※5 グレープリパブリック詳細はこちら ※6 ココ・ファーム・ワイナリー詳細はこちら

信濃屋のワイン専門店-Shinanoya Wine-で取り扱っているワイン