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挑戦する情熱とプロフェッショナリズムからの学び

挑戦した先に描く未来

クラウドファンディングで多くの方々にご支援をいただいておりましたが、ご支援をしてくれた方々には どのような思いがありますか
都倉:

サッカー選手としての「都倉 賢」ではなく、個人としての「都倉 賢」を応援してくださったことが何よりも嬉しかったですね。

加藤:

具体的にはどのような違いを感じたのでしょうか。

都倉:

サッカー選手にとって、応援されることは大きな力になります。チームを応援してくれるサポーターや、サッカーや個々の選手を応援してくださるファンの存在を以前から感じていました。それはピッチ内で大きなエネルギーとなり、選手を支えてくれます。しかし、今回のクラウドファンディングを通じて「都倉」という個人を応援してくださる方々を具体的に認識する機会を得られたことは、ピッチ外での活動をする上で大きな勇気をもらえましたし、本当に感謝しています。

加藤:

確かに目に見えて支援してくれる方々の言葉はより力になりそうですね。確か…クラウドファンディングのリターンに、抽選で『都倉選手が直接ワインを渡しにいく』というのがあったと思いますが、直接会いに行かれたのでしょうか。

都倉:

行きたかったのですが…コロナ禍であり、さらに緊急事態宣言が出ていたため10名ほどでしたが、個々にお電話で御礼を伝えることができました。

加藤:

電話とはいえ、実際に都倉さんとお話するとなると緊張しそうですね。でも、手紙やメールよりも気持ちが直接伝わりそうで素敵な企画だったと思います。

二足の草鞋を履くことが容易ではないことは想像に難くないですが、そこまで自分を追い込めたのはどうしてですか
都倉:

私はアスリートですので、プレーで成果を出すのは当たり前です。しかし、アスリートだからと言ってアスリート以外のことに挑戦することを止める権利は誰にもないと私は思っています。だから、私は”何かに挑戦する人を素直に応援できない”そんな風潮に風穴を開けたいと思って、挑戦を続けています。

加藤:

確かに、アスリートに関しては二足の草鞋を履くことが許されないような風潮が強いように感じますね。

都倉:

私に限らず、現役生活が終わった後の人生のセカンドキャリアを保証されているアスリートはほとんどいません。今はサッカー選手と言う応援される立場にいます。この現役中だからこそ、発信や行動することに意義があると思っています。

加藤:

都倉さんは、ワイン事業への参入や撤退を現役中に考えていましたが、現役中に挑戦する意義とは何でしょうか。

都倉:

現役中であるからこそ、自分の影響力があるうちに何かを発信したり、新しい行動を起こすことが重要です。これによって初動の速さや認知の広がりがプラスに作用すると実感しています。ワイン事業は撤退しましたが、現役中に何かに挑戦することは有効な手段だと考えています。だらかこそ、これからも新しい挑戦を続けていきたいと思っています。ワイン事業への挑戦を発信したことで、後世のアスリートたちが「アスリートでも新しい挑戦をしても良いんだな」と思ってくれていたら嬉しいですね。また、ワイン事業を始めたことで、心から応援してくれている人に出会えたことに感謝しています。実際、加藤さんともこうして出会えましたしね。

加藤:

ありがとうございます。確かに、ワインという共通項がなければ、お互いに出会うことはなかったでしょう。都倉さんがワイン業界に挑戦してくれたことを改めて嬉しく思います。また、今回の挑戦を通じて、都倉さんが「挑戦する人間」であるという印象が強くなったように感じます。もし肩書きやキャッチフレーズのようなものがあるとすれば「挑戦」という言葉がしっくりくると思いますね。

創業時から関わってきた株式会社NewSPO.の取締役COOに就任されました。新しい挑戦に取締役COOに就任しようと思い立ったキッカケはあったのでしょうか
都倉:

元々は、代表取締役CEOの小澤氏が前職で保険代理店に勤めており、そこでアスリートから相談を受ける機会がありました。その際、相談役として付き合いが始まったのが、今思えばきっかけだったのかもしれません。

加藤:

「ヴィニャ・デ・オロ・ボデガ」の金田さん同様に、サッカーが紡いだご縁だったのですか。

都倉:

そうですね。彼もまた藤枝東高校でプロサッカー選手を目指していたこともあり、アスリートの気持ちも理解できるところで意気投合しました。私自身もセカンドキャリアを見据えて新しいことに挑戦し始めていました。話をする機会が増えるにつれて、一緒にアスリートが抱える悩みを解決できることがありそうだと感じました。そこで、彼の会社に私が出資して、元々は裏方的に会社を株主として支えていましたが、現役サッカー選手という立場でありながら、アスリートが抱える課題を私自身が克服することでより説得力を持たせて解決できていれば一番いい宣伝になると考えました。

加藤:

なるほど、先ほどの話にも通じますね。つまり、現役中であるからこそ、自分の影響力があるうちに何かを発信したり、新しい行動を起こすことが重要だという結論に繋がる訳ですよね。

都倉:

はい。ずっと株式会社NewSPO.関わってきましたが、2023年に取締役COOに就任しました。この発表によって、会社の存在が更に世間に認知されたような気がします。さらに、ワインとは異なる興味の対象として捉えられることも、ポジティブに受け止めています。

加藤:

株式会社NewSPO.では具体的にはどのような活動をされていらっしゃるのですか。

都倉:

現在、自社開発したアプリには「アスリート」として、プロやアマチュアに関わらず登録できます。このコミュニティーでは、まずはアスリート同士の交流を活発化させることを目指しています。そして、コミュニティー内でスクール開校などのプロジェクトを立ち上げ、企業からの支援を受けられるようになります。その支援により、アスリートたちの活動をさらに応援し、成長させていきます。

加藤:

現在、転職が一般的な時代になり、転職支援企業も多数存在します。その中でも株式会社NewSPO.は、高度な専門性を持ち、アスリートのニーズを理解することに長けているように感じました。また現役サッカー選手、都倉さんが所属していることで、その存在が説得力を持たせていますね。是非、信濃屋の店頭販売にもアスリートの皆様に協力をお願いしたいものです!!

都倉:

アスリートの中には、まだ自分で認知していない才能を活かせる場所を見つけていない人もいるように感じます。実は、接客や営業などの職種にも向いている可能性があります。彼らは競技を通じて鍛えられたコミュニケーション能力やリーダーシップを活かすことができます。端正で、礼儀正しく、そしてポジティブなエネルギーを持つことが多いため、チームや企業の一員として素晴らしいパフォーマンスを発揮することが期待できます。今後もそんなセカンドキャリアを踏み出せる手助けをしていきたいと思います。

仕事での信条はありますか
都倉:

昨日より今日、今日より明日、少しでも成長することを信条としています。

加藤:

素晴らしいですね。どのような体験からそのような信条を掲げるようになったのですか。

都倉:

幼少期、サッカーを始めた頃は、ボールを真っ直ぐにしか蹴れませんでした。そこで、監督がカーブキックを教えてくれましたが、なかなかうまく曲がりませんでした。しかし、試行錯誤や練習を重ねる中で、蹴った時に初めてカーブがかかり、上手に曲がった時の喜びは忘れられません。この経験から、うまくいかないことがあっても繰り返し試行錯誤した先に成長があり、できなかったことができるようになる喜びを知りました。それが、今の私のサッカーキャリアにも繋がっていますし、人生においても応用ができます。今では子育てにも役立てています。

加藤:

挑戦から失敗や挫折も学び、試行錯誤を繰り返しながら成長することは本当に大切ですね。その経験を、新たに挑戦する力と感じられることは素晴らしいことだと思います。この学びは誰の人生においても役に立てられる教訓かもしれませんね。どんな困難な状況でも、前向きな考え方と努力を持ち続けることが、成功への鍵だと教えてもらいました。ありがとうございます。

いつかまたワイン業界にカエリザキたいという気持ちはありますか
都倉:

今回、ワイン事業から撤退した要因は、兼業での「就農」が困難だと感じたからです。ただ、せっかくワインに携わった以上、完全にゼロの状態には戻したくないと考えています。現在、酒販免許の申請も進行中ですので、また違う形でワイン事業にカエリザキすることはあるかもしれませんね。

加藤:

また一緒にワインについて取り組める日が来ることを心から楽しみにしています。本日はお忙しい中、貴重なお話を聞かせていただき、本当にありがとうございました。

あとがき

ワインは、人々を結びつけ、感動を共有することができる魅力に溢れています。今回は、サッカー選手でありながらワイナリー事業に挑戦した都倉さんへのインタビューを通じて、新しいワインの魅力を探ってみました。

都倉さんの物語は、成功への道筋だけではなく、夢を追い求め挑戦することへの情熱や、成長の証でもありました。一つのことを極めることも素晴らしい努力と才能だと思います。同様に、いくつものことへ同じ情熱を注ぐことも称賛されるべきであり、都倉さんは、サッカー選手とワイン事業の両方に情熱をもって、常にベストを尽くすという姿勢を示してくれました。

ワインは土地や文化、そしてストーリーが凝縮された、芸術とも形容される魅力ある飲み物です。今回の記事を通じて、ワインに溶け込んだ情熱やプロフェッショナリズムがどのようにして、ワインに魅力と深みをもたらしているかを感じていただければ幸いです。

最後に…ワインの楽しみ方は人それぞれですが、それぞれのボトルには心惹かれる物語が込められています。ぜひ、情熱を持った人々の手がけるワインを楽しんで、新たな発見と共に素晴らしい瞬間を過ごしていただければと思います。

取材にご協力いただいた都倉さん、シーズン中のお忙しい中にも関わらず限られた時間ではございましたが、素晴らしい時間を共有していただきましてありがとうございました。次回はサッカーの話も聞かせてください♪

インタビュー:加藤 雅也/文:升田 浩輔/撮影:浦川 なお/撮影協力:海ごはん しまか

この記事のインタビュアーは・・・

加藤 雅也 -Kato Masaya-

鳥取県出身。ホテルオークラ東京(現TheOkuraTokyo)で当時、国内随一の人気と格式のあるフレンチレストランLaBelleEpoqueにてサービスに従事。数々の海外星付きシェフのフェアなど経験し、フランス料理の神髄とサービスマンとしての振舞いを学ぶ。その後、丸の内再開発プロジェクトとしてOPENした、ミクニ・マルノウチにてソムリエに就任し、当時PP100点のボルドー ワインを全てオンリストするなどして話題に。そして若手ソムリエコンクール(当時25歳以下)にてファイナリストを経験。ソムリエとして更なる飛躍を目指し、当時パリ一つ星「STELLA MARIS」 の吉野建氏が東京にOPENした「tateru yoshino」のソムリエに就任。 現在は、信濃屋のワインバイヤーとして、ソムリエとしての経験と世界11ヶ国のワイン生産地を訪れた現地での情報を基に、ビギナーからプロフェッショナルまで楽しめるワインショップとして業界で注目され続けている。 また人と人との出会いを大切に、オン・オフのマーケットの交流とリテールに携わる人々の社会的な向上をはかり広く社会へ貢献することをモットーに日々奮闘中。

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