ペアリング体験記 at Restaurant TOYO
目次
Profileプロフィール
東京都出身。東京都内にて数店舗でのソムリエを経て2011年に銀座「 l’Odorante」で支配人・ソムリエとして今帰仁 実シェフに従事。フランス料理の哲学、サーヴィスマンとしての根幹と礼節、人と人との大切さを学ぶ。2014年には、麻布十番「Liberté a table de TAKEDA」(ミシュランガイド一つ星)の支配人・シェフソムリエに就任。同店が海外展開をするため閉店すると、2018年にオープンするフランス・パリRestaurant TOYOの日本店となる東京ミッドタウン日比谷の「Restaurant TOYO」の統括支配人兼エグゼクティブソムリエに就任した。2020年には現職の傍ら自身がプロデュースするRestaurant Solfègeを自由が丘にオープン。今までに経験した国内外の様々なレストランとのコラボレーションを基軸に、様々な飲食店やバーのドリンク監修、またTBSドラマ 「グランメゾン東京」のワイン選定等レストラン業務の枠を越えた活動を行い、フレンチの枠に留まらないイノベーティブな料理に合わせて、世界中の飲料からのペアリングを提案している。
成澤 亨太を紐解くキーワード
今回のテーマ
前回のインタビューを行っていた中で”Restaurant TOYO 成澤”と”信濃屋バイヤー 加藤”は、ワインをもっともっと広めたいという点で共鳴し、今回のペアリング体験が実現。Restaurant TOYOの料理に、信濃屋直輸入のワインをペアリング※1させるという企画。
※1 ペアリングとは…料理ごとに合うワインを組み合わせること
※前回のインタビューはこちらから
テーマは『レストランの感動体験を家庭で疑似体験してもらうこと』
信濃屋のスタッフも同席して、現職のソムリエ:成澤氏が提案するペアリングを体験。それは想像を超えるものでした…その体験を踏まえて我々(信濃屋)がレストランで感じたことをご紹介させていただきます。記事の最後にペアリングをご自宅で疑似体験していただけるセットをご用意いたしました。実際に楽しんでいただくことで家庭でのワインライフ、そしてレストランで過ごす時間をより素敵に感じていただけると思います。また、ワインに興味はあるけれどあまり飲まない…これから飲んでみようかなと思っている方々にも試していただければ、きっとワインの魅力を体感していただくことができるはずです。是非、ワインを片手にこの記事を読んでください♪
料理とワインのペアリング
一品目
季節の野菜(りんご・金柑・生姜の葉)に
熟成ミモレットチーズを振りかけて
バターナッツかぼちゃのポタージュ
〜カカオのアクセント〜
ペアリングのワイン
CHECK
寒さが深まると白ブドウ主体のシャンパーニュよりも、黒ブドウ主体の方が季節柄コクのある食材(根菜など)も増えるので料理に合わせやすい。季節に合わせた1杯を選ぶのもポイント。
スタッフが感じた印象
フルーツの酸味にシャンパーニュが持つフレッシュな酸が相乗し、果実感にはポタージュの濃厚な食感とチーズの濃厚な味わいが重なります。シャンパーニュ特有の複雑な風味に生姜の葉やカカオのアクセントが合わさるマリアージュは、これから始まるコース料理への期待を膨らませる一品でした。
成澤氏のコメント
シーンや銘柄でシャンパーニュを選ぶのも一つですが、シャンパーニュの個性や料理との相性でも使うシーンを選び分けるとシャンパーニュを楽しむ幅が広がると思います。このバターナッツポタージュの風味やカカオの苦味にフォーカスをすると、キュヴェ・アガパンヌが持つ黒ブドウ由来のタンニンと重なりやすいです。少し難しいかもですが、料理の重心とシャンパーニュの重心を合わせることが大切です。
CHECK
あえて、ハンガリーのグリューナー・ヴェルトリーナーにフォーカスを当てたペアリング。このワインの特徴にあるヨード香※2に焦点を合わせたマリアージュ。
スタッフが感じた印象
とろろ昆布にグリューナーのヨード香がバッチリ合います。そしてマナガツオの上品な味わいにサラダセロリの青っぽさが、このワインが持つ風味の特徴であるアロマティックな香りをより引き出していました。
※2 ヨードとは…ミネラルの一種で昆布などの海藻に含まれるヨウ素のこと。ヨード香は、磯の香りのこと。
成澤氏のコメント
グリューナー・ヴェルトリーナーは、光り物や和食などの相性が良いです。グリューナーに塩味があるので、料理に塩味を加える要素を持たせています。また香りの特徴も料理にエッセンスを加える効果も期待できます。ご家庭でいつもと違うレパートリーとして、『桃のサラダ仕立て』に塩味のあるこのワインをオススメしたいです。グリューナーが個人的に好きなので、是非試してみて下さい。
三品目
牡蠣のムニエル
〜根セロリのピューレとパウダーを添えて〜
ソース・ブール・ノワゼット(焦がしバター)
ペアリングのワイン①
ペアリングのワイン②
CHECK
定説の『牡蠣×シャブリ』とは一線を画すペアリング。同じ料理に白ワインと赤ワインを合わせてもらいました。
スタッフが感じた印象
牡蠣は磯の香りが特徴的です。そのためワインは樽香がないワインかつ、酸味と柑橘系のフレッシュな風味があるガヴィをペアリングしました。シャブリも合わなくはないのですが、1級畑やグラン・クリュのようなワインはペアリングしない(ワインの風味が強すぎる)傾向が強いので『牡蠣=シャブリ』だけではないことを体感したペアリング。
成澤氏のコメント
ガヴィは牡蠣が持つ磯の香りにフォーカスしています。ワインは樽香のないガヴィを選んでいるので口中をリセットする役割もあります。磯の香りには、柑橘系の特徴が出る白ワインを合わせて酸味を加え、牡蠣本来の旨味を引き出す調理方には樽を効かせている白ワインよりもステンレス熟成のピュアな白ワインがオススメです。
CHECK
牡蠣には白ワインという一辺倒だけでなく、調理法やソースなどにフォーカスすることで赤ワインも相性の良さを発揮します。
スタッフが感じた印象
調理法をムニエルにしたことで牡蠣の食感と、ワインが持つメルロのシルキーな口当たりが同調します。また、焦がしバターのソース(メイラード反応※3)を使うことで、赤ワインにも合わせられる香ばしさを引き出している素晴らしいペアリング。生牡蠣では考えられない、赤ワインを牡蠣と合わせるために考えられた調理法で仕上げてくれました。
※3メイラード反応とは…加熱により褐色物質の「メラノイジン」などの成分ができる反応で、香ばしい風味が生成されます。
成澤氏のコメント
牡蠣の風味にボリューム感があるので、ワインも同様にボリューム感がある赤ワイン(メルロ)を選びました。カベルネ・ソーヴィニョンだとボリューム感がメルロよりあるので、牡蠣の長所を消してしまいます。そのため、ボリューム感がほど良いナチュリスト[2020]を選びました。ご自宅でもムニエルなどにして試してほしいです。食材を焦がす(調理方法)ことで料理にタンニンを含ませれば、魚介類でも赤ワインに合わせやすいです。