ワインをより楽しむためのメディア

SHARE

レストランとワインショップの融合

レストランに起こった変化

コロナ禍を経た今だからこそ感じるレストランの魅力はありますか
成澤:

その人にしか提供することができない『時間を楽しめる空間』こそがレストランの魅力だと思います。
コロナ前までは食事を売っているのでなく、体験を売るのがレストランだと思っていました。コロナの影響で、そのフェーズが変化したと感じています。お客様が、体験から『人』にフォーカスしてレストランを選ぶようになったと思います。レストランが美味しい料理やワインを出すのは当たり前。その体験に価値を与えられる『人』がとても重要で、人と会うことにリスクが叫ばれる昨今、より一層その人が創り出す空間(レストラン)は魅力だと思います。

この3年間でお客様にはどういった変化が見受けられますか
成澤:

今まで以上にレストランでの時間をより大切にしているように感じますね。

加藤:

時間の価値観が変わってきたということでしょうか。

成澤:

例えば旅行も頻繁に行っていると有難味がなくなるように、久しぶりに旅行をすると心から満喫したいと思うのと似ている感覚かもしれません。レストランに限らず、個々の時間の使い方が変わってきている印象があります。

ソムリエの立場から見えるワインの世界

海外でのレストランと日本のレストランに違いはありますか
成澤:

難しい質問ですね(笑)ひと昔前までは違いを感じましたが、その違いは徐々にボーダレスになっている印象はあります。(※1)テロワールと言う言葉があるように、地方性に違いを感じておりました。

加藤:

いわゆる郷土意識や地産地消の意識が海外の方がより強い印象でしょうか。

成澤:

前はそのイメージでしたが…今は美味しいものは美味しいと認知してくれる世の中であるのは世界共通なので、食のグローバル化が進んでいるのも海外との違いを埋めた一つの要因かもしれません。SNSやネットの普及も後ろ盾になり、今や携帯一つで地球の裏側の料理を学べますので、食文化やレストランにおいても多様性が生まれていることで、違いはあれどボーダレスな世の中になってきているように感じます。

※1 テロワールとは…食材やワインの原料であるブドウなどを取り巻くその土地特有の自然環境要因のこと

料理とワインのペアリング(マリアージュ)で大切にしていることはありますか
成澤:

一番心掛けていることはその料理を引き立たせるためのワインを選ぶことです。
ペアリングのポイントはたくさんありますが、屋台骨としてレストランはワインを飲みに来る場所ではなく料理を食べにくるところだということを忘れずに意識しています。もちろん世界的なワインの流行などは取り入れつつも、料理との相性を逸脱したペアリングはしないよう心掛けています。
余談ですがワインのペアリングを公にするのは意外と恥ずかしいんですよね(笑)将棋の棋譜と似ていて、その人の感性やキャリア、個性、性格など全てを曝け出すので、丸裸にされた感じがして少し照れます(笑)それがまたレストランペアリングの魅力でもあるんですが…

加藤:

とても興味深い内容ですね。そのお話を聞いたので、次にレストランでワインを飲むときにはソムリエさんの背景も楽しめそうです(笑)

ワインの表現をする上で大切にしていることはありますか
成澤:

専門用語と誰にでも分かる表現を使い分けることが大切だと思っております。
専門用語を使うことで説明に艶が出て高揚感と説得力、そしてそのワインを飲みたいと思うようなワクワク感がでます。
例えばダイヤモンドを買うときにスペック(10カラットでチェーンの長さは30センチなど…)を説明されるより”水深10mでも輝きを失わないダイヤモンド”のような表現をした方がピンと来るのと同じですよね。このように8割は分かり易く、そして2割は専門的なことを伝えることを意識して説明しています。