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一人でも多くへ届け“本物の”ニュージーランドワイン

ニュージーランドワインを見続けてきたからこそ思うこと

開業当時に取り扱っているワイナリーは何件でしたか。
檀原:

最初は3つのワイナリーから取り扱いを開始しました。その内、2社は今でも長いお付き合いとなっております。それが「インヴィーヴォ」※2「ブラッケンブルック」※3ですね。

※2 インヴィーヴォ-INVIVO-のワイナリー紹介はこちら

※3 ブラッケンブルック-Blackenbrook-のワイナリー紹介はこちら

加藤:

その2社と取引を行うようになった出会いはどのようなものだったのでしょうか。

檀原:

当時は、サンプルを買ってから空輸で送り、日本で試飲をして現地へ訪問していました。日本に入ってきていないワインを選定して、中でも印象が良かったものに絞っていたのですが、その2社は断然味わいが良かったので「これは押さえなければ…」と思いながらニュージーランドへ行きました。

加藤:

テイスティング能力と勘の良さに加え、行動力が実を結んだ成果ですね。

現在、ニュージーランドには700社を超えるワイナリーがあると言われていますが、設立から13年でどの程度のワイナリーを訪れましたか。
檀原:

加藤さんはご存知だと思いますが…(笑)改めて思い返すとどの程度でしょう。1年に約7〜10のワイナリーを訪問しますので、コロナ禍の渡航できない期間も含めて70〜80社程度だと思います。

加藤:

訪れたワイナリーだけでなく、現地でも見たことがないニュージーランドワインは購入して飲んでましたよね。なので、ワインの本数自体は相当な数を飲まれたのではないでしょうか。

檀原:

飲みましたね…(笑)確かに本数だけならば数百種類以上は飲んでいると思います。現地で飲んだものが、帰国後しばらくしてから別のインポーターが輸入されているのも何度も見てきました。

設立当初からニュージーランドワインを見てきて、近年感じる変化はありましたか。
檀原:

10年前に比べると多様性が増えたかなと感じます。当時はやはりソーヴィニョン・ブラン一辺倒でした。ステンレスタンクを使いキリっとした酸味にフレッシュな果実感のものが主軸でしたが、そこから樽やアンフォラ熟成のソーヴィニョン・ブランが出てきたり、自然酵母を使って醸造したワインが生まれたりとバリエーションが広がりました。ピノ・ノワールも人気が定着して、今では他の品種も評価されるようになって、10年前に比べると品種にしてもスタイルにしても多様性が段違いに表現されるようになったのかなと思います。

加藤:

おっしゃる通りだと思います。元々あった多様性がより明確に表現されるようになってきたのを感じます。では、5年後10年後はどんな進化を遂げていくと思いますか。

檀原:

世界的なナチュラルワインの潮流に合わせて、自然派ワインのバリエーションは増えていくのだろうなと予想しています。ただ、個人的に期待をしているのは樹齢が延びたソーヴィニョン・ブランやピノ・ノワール、シャルドネの品質が上がってきます。少し高価格帯(5,000円〜10,000円)のワインとして、産地を越えてニュージーランドワインの品質が高いということを世界に認知されて欲しいと願っています。安価で気軽に飲めるのも魅力ではありますが、王道でも負けて欲しくないなと思います。

加藤:

世界的にピノ・ノワールやシャルドネの引き合いが強い中で、間違いなくニュージーランドは銘醸地に入っていると思います。おっしゃる通りで、その価格帯(5,000円〜10,000円)で評価されるとニュージーランドワイン全体にも相乗効果が期待できそうですね。

ニュージーランド全土から上質なワインが造られていますが、中でも注目の産地はありますか?
檀原:

そうですね…やはり最大産地のマールボロはどうしても外せません。ただ初期の頃は、ソーヴィニョン・ブランを探しにワイラウ・ヴァレーやアワテレ・ヴァレーを訪れていましたが、ここ数年はサザン・ヴァレーの樹齢が延びてきたり、粘土質のテロワールを上手く表現した今までとは違うスタイルのワインが造られてきているので再注目しています。

加藤:

わかります。注目されてくるとより細分化される傾向にありますよね。ワインを深堀するとサブリージョンなどは好奇心をくすぶる部分でもありますが、ワインに対する知識が無くてもダイレクトに分かり易い表現の違いも大切になってきているように感じます。

檀原:

少し注目産地とは違いますが、ワイパラ・ヴァレーはリンカーン大学であったり、海外の人達を受け入れる窓口としてワイン業界の大切な役割を担っていることも忘れてはいけないなと思います。

ニュージーランドでは、大勢の日本人ワインメーカーの方々が活躍されています。檀原さんと同様に、ニュージーランドに魅了される日本人の方々が多い国とも感じられますが、その魅力とは。
檀原:

人によって理由は様々だと思いますが…グリーンソングス※4のコウヘイさんが、海外からきて農家になれる環境は大きいと話していたのを覚えています。他の国ですと農家になるのは困難です。それに”取得できるだけの土地がある”ことも重要です。あとは良くはありませんが、温暖化の影響もニュージーランドの環境ではワインメイキングにおいてポジティブな作用を及ぼすと言われています。その可能性を信じて、様々な国からワインを造る方々が入ってきているのではないかなと思います。

※4 グリーンソングス-GREEN SONGS-のワイナリー紹介はこちら

加藤:

なるほど。私も渡航に来ると治安の良さも大きな要因だと体感しています。日本人の方だと島国で似た雰囲気も感じられるのではないでしょうか。

檀原:

もちろん、その要素も大きいと思います。あとは、ワインメイキングにおいては明確な四季があることも大切だと思います。日本と違う特徴は「夏はカラッと暑い」「冬はしっとり寒い」。この環境は人にもプラスですし、ブドウにおいても病害が少ない好条件だと思います。

ニュージーランドはワークライフバランスを整えることを教えてくれた

ワークライフバランスがとても充実しているように思えますが、意識的に行っていることはありますか?
檀原:

ありがとうございます。ワイン以外のことですと、出来るだけ運動はするようにしています。やはりメンタルを整えたり、健康体でいないとパフォーマンスが発揮できないと思っているので…こんな答えでいいですか(笑)

加藤:

大丈夫です(笑)こういった話が聞けるのも、この企画ならではなので。ちなみに、目標とされている人物や尊敬されている方はいらっしゃいますか。

檀原:

関わってくださる方々への感謝や尊敬の念は抱いてますが…とりわけ生産者の影響は大きいかなと思います。生産者側から寄り添ってくれて、更に意見を聞く姿勢を持ちながら接してくれているのは見習わなければと思いますね。あとは、もらえるご縁を大切に繋いでいくことを心掛けています。

加藤:

素晴らしいですね。私も感謝の気持ちを忘れずに持ち続けていきたいと思います。

檀原:

関係があるかは分かりませんが、ニュージーランドでは料理と一緒に雰囲気を楽しむことが多いです。海の見えるテラス席でグリーンマッスルとソーヴィニョン・ブランを楽しんだり、BBQでラム肉チョップを食べながらピノ・ノワールを飲んだり…食事とワインだけではなく、そういったシチュエーションも楽しむようにしています。

ニュージーランド固有の絶品グルメ「グリーンマッスル」
出典:ニュージーランド政府観光局
加藤:

マリアージュを超越した楽しみ方ですね(笑)でも、とても大事なことだと思います。

仕事での信条はありますか。
檀原:

約束を守ることを大切にしています。小さな約束だろうと大きな約束だろうと、そこを紡いでいくことが縁を育てていくことだと思います。

加藤:

素晴らしいと思います。これからも約束を守りますので引き続きよろしくお願いします。