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ペアリング体験記 at restaurant Nabeno-Ism

Le Couscous

ブルターニュ産オマール海老発酵バターポワレと長崎対馬産穴子の全粒粉ベニエ
夏野菜(つるむらさき、ズッキーニ、オクラ)と共に
フランス国民食『クスクス』仕立てに、ミントとコリアンダーを香らせ、薫り高いブイヨンを注いで

Red Wine

エッセルチ エトナ・ロッソ DOC “アルベレッロ”
-SRC Etna Rosso DOC “Alberello”-

ブイヨンソースをテーブルで注いで完成
濃密な香りがテーブルを満たします

CHECK

バターでポワレしたブルターニュ産オマール海老は、甲殻類のソースをベースに、コライユが入ったオレンジ色のソースを合わせ、長崎産対馬の穴子、天使の海老をひよこ豆の粉でベニエにしたもの(ソッカベニエ)を合わせ、夏野菜(つるむらさき、ズッキーニ、オクラ)を漬け込んだフランス国民食クスクスとともに。

最近の中では神田氏の1番のお気に入りワイン
加藤のコメント:

クスクスは非常に多様なバリエーションがあり、具材や調味料によって異なるスタイルの料理が作られます。フランスでも伝統的に食されており、甲殻類ソースの旨味をたっぷり吸ったクスクスを赤ワインと合わせてもらいました。
神田支配人から、ナベノ-イズムはフランス料理なので、普段はあまり提供しないと言っていたイタリア/シチリアのワイン…引き出しの多さを感じたペアリング。ネレッロ・マスカレーゼから造られる赤ワイン。赤い果実やブラッドオレンジの第一印象に、凝縮感を想起させる香り。複雑さと深みが重層的な印象を与えて酸も美しく、とてもエレガントです。思わず料理にワインを注ぎたくなるほどの相性でした(笑)

神田氏のコメント:

ナベノ-イズムでは夏定番の一皿ですが、このエッセルチのアルベレッロがここまで寄り添ってお互いを引き立て合う相性を見せてくれるとは思いもしませんでした。
自根でしかも高樹齢の区画から造られるこのキュベは緻密でありながら非常にエレガント、スケール感の大きさも感じさせます。シェフの仕立てる香り高く旨味たっぷりのブイヨンの味わい、スパイスの余韻をさらに引き上げてくれます。クスクスはフランスでは南フランスで非常にポピュラーでありますが、地中海一帯の料理と捉えればシチリアもありかな…と思いつきでしたが、ここまでハマるとは自分自身でも思いませんでした。 

各テーブルを回って挨拶をする渡辺シェフ

Le Filet de Veau

ブルターニュ産仔牛フィレ肉のムニエル
トウモロコシの様々な表現(ピュレ、グリエ、フライ、)
薫り高いジュ・ド・ヴォー OSMICトマトと水茄子のマリネのサラダ

Red Wine

シャトー・テルトル・ロートブッフ -Chateau Tertre Roteboeuf

ワインの詳細はこちら

CHECK

夏になると食べたくなる食材「とうもろこし」。渡辺シェフの少年時代に家族で軽井沢に旅行をし、街道沿いで焼きとうもろこしを買ってもらい、一本丸ごと食べさせてもらった喜び、味の記憶と香りの思い出…様々な調理法とテクスチャを重ね、一皿でとうもろこしの全てを味わえるよう思い出から表現された料理。
シンプルにムニエルで焼き上げたピュアな味わいの仔牛肉に香り高いジュ(仔牛肉の焼き汁)、鮮烈な美味しさの西家柚子胡椒とハラペーニョを潜ませたクリームチーズのフォンダン、様々に変化させたとうもろこしと皿の中に複雑な味の交差を作り上げた一皿。

王道ボルドー(サン・テミリオン)ワイン
加藤のコメント:

フィレ肉のムニエルは、肉の質が非常に高く繊細で口の中でとけるような美味しさでした。肉の柔らかさとバターの風味、一口食べるたびに口中に喜びが広がり、様々に変化させたとうもろこしが手を休めることなく食材を口へ運んでくれます。
最後は王道。フランス/ボルドー/サンテミリオン・グラン・クリュに格付けされているテルトル・ロートブッフ。メルロ主体で造られる長熟でしなやかなワイン。オフヴィンテージに数えられる2012年ですが、フレッシュさを残しながら、こなれた熟成感が表現されておりとても美味しいです。”今”狙うべきヴィンテージだと言えそうです。

神田氏のコメント:

仔牛のフィレという繊細な身質にとうもろこしという甘味が特徴的な付け合わせ、そしてオーストラリアの黒トリュフと…どこにペアリングをフォーカスしようか悩んでしまいそうですが、そのような時は俯瞰で料理の全体像を見てこの一皿に寄り添うワインは何んだろう?と考えるようにしています。ほのかに熟成も感じさせるメルロはほんのりトリュフの香りも感じさせます。柔らかですがきめの細かい味わいは、繊細な仔牛の身質にもいいバランス感をもたらします。まさに飲み頃になってきた味わいと広がる香りは幸福感をもたらしてくれます。名前もテルトル・ロートブッフ(牛)ですから牛肉に間違い無い組み合わせかと思います。

1er Dessert 

山梨県産白桃のコンポート、ミントを加えて爽やかなスープ仕立てに
濃厚なアーモンドのブランマンジェと合わせて
フランボワーズの葛餅、イタリアソレント産リモンチェロ香る氷を忍ばせて

Dessert Wine

チャートン マールボロ・プティ・マンサン-Churton Marlborough Petit Manseng-

ワインの詳細はこちら

2em Dessert

慶応四年創業 浅草木村家 人形焼と
日本堤 バッハコーヒー イタリアンエスプレッソとのデュオ

Dessert Wine

シャトー・クリマン-Chateau Climens-

ワインの詳細はこちら

1er Dessert
チャートン マールボロ・プティ・マンサン
2em Dessert
シャトー・クリマン

CHECK

フランスの老舗菓子店「ダロワイヨ」発祥のケーキ「ガトーオペラ」をデザート仕立てに、ベノ-ズムでしか食べられない浅草の老舗店と共に再構築した一皿。慶応四年創業の木村家※4人形焼を日本堤に店を構えるバッハコーヒー※5のイタリアンエスプレッソを贅沢に染み込ませ、香り高いプラリネのバタークリームとフランス・ヴァローナ社のマンジャリのガナッシュと合わせた見た目も美しいデザート。

Café et Mignardises

日本堤 バッハコーヒーと駒形をイメージした小菓子

※4 元祖 人形焼 浅草 仲見世 木村家本店の詳細はこちら

※5 バッハコーヒーの詳細はこちら

Café et Mignardises
当日のペアリングで提供されたワイン
加藤のコメント:

デザートと甘口ワインは、至福の時間を最高の締めくくりとして余韻を与えてくれました。デザートの優雅さと甘口ワインのエレガンスが、口の中で広がる味わいは時間を忘れさせてくれる味わいでした。
チャートン マールボロ・プティ・マンサンは特に印象的で、複雑でアロマティック。口当りは、甘くデリケートな印象を受けますが、存在感のある強い酸味によって絶妙なバランスを誇ります。後日思わず、個人買いをしてしまった1本でもあります。

神田氏のコメント:

プティ・マンサンは少し酸味の効いたソースを組み合わせるイメージで合わせています。それにより全体が引き締まり桃の甘さが引き立ちます。アルコール度数も11度と低めなので軽やかに楽しめます。最後は鉄板の組み合わせだと思いますが、チョコレートの余韻を引き上げながらもクリマンのもつ味わいと香りがさらに重なり合うことで、より重層的で豊かな余韻を楽しめます。

あとがき

ミシュラン2つ星のレストランでの食事体験は特別なひと時であり、その感動と記憶は長く我々の心に残ります。料理やワインはもちろんのこと、レストランの雰囲気やスタッフのきめ細やかなサービス。ただ単に楽しむことだけではなく、ワインを販売する我々にとって体感することで一流のおもてなしや料理への意識、ワインのペアリング方法・知識を吸収することができます。

冒頭にも申し上げた通りミシュラン星付きレストランでの食事は、高価で特別なものです。この体験を元に、お客様のライフスタイルに合わせたお好みのワインをご提案することこそ、信濃屋が求めるワイン販売員なのかもしれません。今日は○○食べるんだけど…ちょっと特別な日にワインを飲みたいんだけど…そんな様々なご要望も知識や経験から導き出したワインをご提案することになります。時にお好みに合わないワインをご提案することもあるかもしれません。それがワインのポテンシャルなのか…はたまた提供の温度は…いつ抜栓したか…どんなグラスで楽しんでいるのか…レストランとは違う要素もお客様に伝えていくことは正直難しいかもしれません。しかし、今回ベノ-ズムで学んだ経験がゆくゆく役立ち、お客様に自信を持ってご提案できる礎になりますよう、我々も日々精進していきたいと思います。

文末になりましたが、レストラン Nabeno-Ismベノ-ズム渡辺シェフをはじめ支配人 神田 岳志氏。そして、当日も素晴らしいサービスと料理をご提供いただきました関係者皆様に感謝を申し上げます。素晴らしい体験と時間を忘れる至福の瞬間をご提供いただき誠にありがとうございました。

撮影後、閉店後のオフショット
左:支配人 神田 岳志氏
中央:信濃屋バイヤー 加藤 雅也
右:エグゼクティブシェフCEO 渡辺 雄一郎氏

撮影場所:restaurant Nabeno-Ism

この記事のインタビュアーは・・・

加藤 雅也 -Kato Masaya-

鳥取県出身。ホテルオークラ東京(現TheOkuraTokyo)で当時、国内随一の人気と格式のあるフレンチレストランLaBelleEpoqueにてサービスに従事。数々の海外星付きシェフのフェアなど経験し、フランス料理の神髄とサービスマンとしての振舞いを学ぶ。その後、丸の内再開発プロジェクトとしてOPENした、ミクニ・マルノウチにてソムリエに就任し、当時PP100点のボルドー ワインを全てオンリストするなどして話題に。そして若手ソムリエコンクール(当時25歳以下)にてファイナリストを経験。ソムリエとして更なる飛躍を目指し、当時パリ一つ星「STELLA MARIS」 の吉野建氏が東京にOPENした「tateru yoshino」のソムリエに就任。 現在は、信濃屋のワインバイヤーとして、ソムリエとしての経験と世界11ヶ国のワイン生産地を訪れた現地での情報を基に、ビギナーからプロフェッショナルまで楽しめるワインショップとして業界で注目され続けている。 また人と人との出会いを大切に、オン・オフのマーケットの交流とリテールに携わる人々の社会的な向上をはかり広く社会へ貢献することをモットーに日々奮闘中。

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