生産者インタビュー〜徳島県三好市のワイナリー Natan葡萄酒醸造所 井下 奈未香〜
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先駆者の志を継ぎ、新たな今と未来を切り拓く
たくさんの方々に支えられていたので、男性が多い業界で働いていると意識したことはあまりないですね。
素晴らしいですね。では印象に残っているチャレンジはございますか。
そうですね…委託醸造させていただいていた※3島之内フジマル醸造所で、2018年に初めて委託醸造をした際は、特に印象深い出来事でした。重たいものを運んだり、タンクを一つ洗うにしても、身体を傷つけて痣だらけになることもありました。醸造が始まるとアドレナリンが出てくるので、後から気付いたら必死だったんだなと傷を見て実感しました。そこから、このままではいけないと感じ、日々筋トレを行ったりしたことを覚えています。
確かに。個人差もありますが、人間の骨格や筋肉量は性差を感じることがありますよね。
そうなんです。醸造の際、バスケットプレスで葡萄を絞る作業があります。自分が限界まで絞ったつもりでも、委託先の男性が絞るとまだまだ絞れるんですよね。その時は生物学的な違いを痛感しました(笑)。始めは悔しい思いもしましたが、その経験から、女性ならではの造りや表現を意識するようになりました。
※3 島之内フジマル醸造所の詳細はこちら
15年以上前、私がワインバーをしていたころのお客様には、今ほど日本ワインやナチュラルワインも受け入れられていなかったです。今の時代を迎えるまでに日本ワインやナチュラルワインの土台を築き上げ、広げてくださった方々には感謝しかないです。
確かに、当時はまだまだナチュラルワインを飲む機会は多くなかったですね。呼び方も今の「ナチュラルワイン」「自然派ワイン」とは違い「ビオワイン」と総称されていた記憶があります。
そんな時代の中でも、自分自身が興味のある国内外のワイナリーを中心に見学をさせていただいておりました。そして、当時※4ヒトミワイナリーさんが醸造していた「にごりワイン」が特に印象的でした。今は※5イエロー・マジック・ワイナリーの醸造家である岩谷さんがアンフォラ(ワインを運搬・熟成させるための素焼きの容器)を使ったワインを造っていたことも、衝撃的でした。
イエロー・マジック・ワイナリー(岩谷さん)は開業当時から弊社も取引させていただいており、お客様の中でもファンが多い生産者の一人です。Natan葡萄酒醸造所のナチュラルな造りに通じるエピソードだなと感じました。
30年以上にわたり先輩方が築いてきた日本のナチュラルなワイン造りの礎があったからこそ、Natan葡萄酒醸造所のワインも世に出ることができ、今もワイン造りができるということを忘れてはいけないと思っています。30年以上前に私たちがワイン造りを始めていたとしても、おそらく手に取ってもらえなかったでしょう。本当に感謝しています。
時代と思いを紡ぎながらチャレンジを続けている姿は、きっと先輩方も誇らしく感じていると思いますよ。
ありがとうございます。他にも※6飛鳥ワインの代表 仲村さんや※7丹波ワインの末田さんなど…お世話になった方々には感謝しかないです。
※4 ヒトミワイナリーの詳細はこちら ※5 イエロー・マジック・ワイナリーの詳細はこちら
※6 飛鳥ワインの詳細はこちら ※7 京都丹波ワインの詳細はこちら
信濃屋のワイン専門店-Shinanoya Wine-で取り扱っているワイン
開業当初は頻繁に買いに来てくれることはないだろうと思っていましたが、嬉しいことに想像以上に買いに来てくださった実感があります。また、ご自身で飲む機会がなくても「プレゼントに送ったるから」とご年配の方々が来店してくださり、徐々に浸透している感じがあります。
Natan葡萄酒醸造所が開業するまでは、この地域の方々はワインと触れ合う機会も少なかったでしょうから、新鮮味も感じられたのかもしれませんね。
そうですね。三好市において、ワイン文化がまだ浸透していない中で突然醸造所ができたことは、地域の人々に興味をもってもらうキッカケになったと思います。単純に面白がって受け入れてくれた感じがしますね(笑)。未だに世間では、ワインは高級なイメージが付いていると感じますので、それを払拭していくことも大切かなと感じています。
三好市では特に、Natan葡萄酒醸造所のワインがきっかけでワインを飲むようになった方々も多数いらっしゃるでしょうね。
嬉しいことに、そう言っていただく方々も増えてきました。