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restaurant Nabeno-Ism 支配人 神田 岳志氏に学ぶ”最高の自分になるため”の道標

二つ星レストランのソムリエから見るワインの世界

神田さんが今後注目している産地や品種などはありますか
神田:

魅力的な産地は多々あり、日本ワインなども扱ってみたいなとは思います。しかしながら、ナベノ-イズムはフランス料理なので、フランスワインは欠かすことができません。その中で注目しているのはシャンパーニュ地方です。時代と共にスタイルも変化があり面白くて、今後益々フォーカスされていくと思います。フランスワインは多様性があり、お料理に合わせて産地も選んだりできます。王道のフランスワインではありますが、来店されたお客様には新しい発見をしてもらえるようワインも選定しております。

加藤:

確かに料理からワインを紐解いていくとフランス産地を深堀りして、探求していくことが最善であり最適なことが理解できました。ペアリングが主流の今の時代、料理に合わせるということをやはり忘れてはいけませんね。

礎となった教えや教訓はありましたか
神田:

周囲からは若手として扱われなくなりましたが…(笑)気持ちはまだまだ若手なので、日々学んでいく心持ちではいますが…
今こうして働いていることは、育てて下さった先輩方のおかげなので、皆様に感謝しています。その中でも、特に強く影響を受けたのは若林さん※5ですかね…

加藤:

若林さんの教えの中で思い出に残っていることはありますか。

神田:

一から十まで、全てを事細かに伝えてくれるタイプではないのかもしれませんが…怒られるかな(笑)
印象に残っていることは、私のミスでシャンパーニュの提供温度をしっかり冷やすことをせずに、保管している冷蔵庫の温度帯で提供したことがありました。その際に若林さんから提供温度1℃、2℃の違いで味わいが変わることを教わりました。
その教えのおかげで繊細なことへの意識や、より美味しく提供する為の意識を改めることができたキッカケとなりました。

加藤:

これまで出会った若林さんはじめ、様々な先輩方の教えが神田さんの中に脈々と受け継がれているんですね。

※5 若林 英司氏の詳細はこちら

ミシュラン2つ星で働くプレッシャーはありますか
神田:

お客様がご来店されるにあたり、ナベノ-イズムに求められていることが高いことは自覚しています。ですので、プレッシャーはあります…しかし、誇りもあります。嬉しかった出来事として、カタチに残る評価もいただきました。私は2020年からナベノ-イズムに在籍しています。2019年まではミシュランのブドウマーク※5が付いてなかったのですが、私が在籍してからブドウマークを獲得することができました。

加藤:

素晴らしい功績だと思います。レストランにとって”ソムリエ”の存在も重要な役割だということですね。やはりミシュラン発表の際は緊張感がありますか。

神田:

緊張感はあります。ただ有難い環境下だとも感じています。普段から緊張感やアンテナを張り続けることは難しいと思います。そういった意味でもミシュランに評価されることはやりがいやモチベーションになりますし、常に良い緊張感を保つことに役立っています。

加藤:

なるほど。ナベノ-イズムで働くことが、高い基準でモチベーションを維持し続けられる秘訣でもあるのが分かりました。

※5 ミシュランガイドに掲載されているアイコンの意味を表した一覧画像

赤丸で囲っているマークがブドウマーク=興味深いワインを提供してくれるお店に付いてます。

ナベノ-イズムではふんだんに『和』のエッセンスが表現されていますが、ペアリングでも日本酒をご提供する機会はありますか。また日本酒を提供する意図とお客様の反応はいかがでしょうか。
神田:

日本酒は唯一、渡辺シェフのスペシャリテ※6に合わせて提供することがあります。理由はシンプルです。渡辺シェフのスペシャリテに合うからです。

加藤:

中には日本酒が苦手な方もいらっしゃるのではないでしょうか。その際にはどのように対応するのでしょうか。

※6 渡辺シェフのスペシャリテ
両国江戸蕎麦ほそ川の蕎麦粉をソースエミュルッショネの技法で炊き上げたそばがき
神田:

もちろん日本酒が飲めない方に無理強いをすることはありませんので、シャンパーニュやワインを提案することもあります。ただ、一言「苦手かもしれませんが一口合わせてみて下さいませんか」と言うと、面白い事に日本酒が苦手な方も”美味しい”と飲んでくださる方が多いですね。

加藤:

渡辺シェフからもスペシャリテには”日本酒”を使用して欲しいなどのリクエストはあるのでしょうか。

神田:

光栄なことに飲み物に関しては全てを任せていただいております。もちろん、提供する前に試してもらいアドバイスなどはもらいますが、完全に固定したペアリングをするようなことはないです。ペアリングに対しては、ロジカルな思考だけで選ぶことはせず感性を大切にしています。ロジカル6割:感性4割といったところですかね。シェフの料理は繊細かつ重層的なので、その料理に合うワインを求められることはシェフからの宿題を貰った気がしてやりがいを感じます。

加藤:

確かにロジカルに考えれば考える程、迷宮にハマってしまいそうです…難しく考えすぎず、そこで感性を働かせて導き出した答えがナベノ-イズムのペアリングになっているのですね。

星を獲得する上ではチーム力が大切だと思いますが、チームビルディングで大切にしていることはありますか。
神田:

支配人をさせていただいている中で意識していることは、チームでビジョンを共有することです。ナベノ-イズムは、シェフ渡辺雄一郎の料理をお客様に楽しんでもらうための場所です。その場所を表現するためには、チームの意識を一つにまとめることが大切だと思います。

加藤:

私もレストランを色々と見てきましたが、レストランによってはサービスはサービス、キッチンはキッチンと分かれていたりするお店もあります。ナベノ-イズムはどのようなチームでしょうか。

神田:

我々はそんなに大きなチームではありません。ビジョンを共有して、ビジョンを達成する為にみんなが役割を全力で全うしています。渡辺シェフがお客様の元に直接、料理をサービスする光景も珍しくありませんので、サービスの人間もキッチンに介入しますし、逆も然りです。

東京/恵比寿にあるシャトー・レストランジョエル・ロブションで長年エグゼクティブシェフを務めた渡辺雄一郎氏が2016年7月7日東京浅草駒形 隅田川ほとりにて開業したレストラン Nabeno-Ismベノ-ズム。

Nabeno-Ismナベノ-イズムとは、渡辺雄一郎氏のニックネームである「なべシェフ」から取った「ナベノ」と、主義や流儀を表す「イズム」を組み合わせた造語。そして別の意味も込められています。それは、渡辺シェフの恩師である辻静雄校長先生は浅草の地に眠っています。「Nabeno-Ism」の“N”を隠すと「abeno-Ism」となり、辻先生の興された辻調理師専門学校の本拠地である大阪阿倍野を想起させます。

日本の風土に意識を傾けながらフランス料理の本流・定義・伝統を守り、進化させ、独自の感性で楽しく美味しい料理を創り、浅草駒形という土地と融合させてフランス料理の未来を器に描き出します。