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以信伝心1周年特別企画 第1回ワインサミット

ワインを楽しむ上で最も大切なこと

まだワインサミットの途中ですが、雰囲気を伝えるというのは難しいなと思い中座です…対面でのコミュニケーションでは、声の抑揚や表情、更にジェスチャーなどの要素が発せられる言葉を補完し、雰囲気を伝える上で重要な役割を担います。それを理解した上で、今回は特に読者の皆様にはワインを片手に見ていただきたい内容です。

食事(ワイン)を楽しむ上で大切な条件がいくつかあります。「材料の質」は料理の味わいを大きく左右します。また、その食材をどのように「調理する(調理方法)」かも重要です。その食材の持ち味を最大限に引き出す「調理法」を導き出す事は必要不可欠です。そんな数多ある条件の中で今回の食事を通して体感した大切な条件こそ、その食事を楽しむ雰囲気です。食事の場所や食卓を囲む顔ぶれ、それによってもたらされる精神状況。それこそ食事(ワイン)の楽しさや満足感をより一層素晴らしいものにしてくれる条件だと感じることができました。

ここからは是非、友人のSNSを覗くように…好きなサブスクを見るように…そんな雰囲気でご覧いただければと思います。それでは後半編です♪

Poisson de jour

湯葉で巻き上げた鰆(サワラ)とホタテ貝

バターソースと白みそのアクセント 根セロリのピューレとチップス セロリの泡

White Wine

ドメーヌ・モン Dom Gris-ドン・グリ-[2021]

加藤のコメント:

ドメーヌ・モンのフラッグシップワイン「ドン・グリ」です。山中さんが唯一、自園畑で栽培しているピノ・グリを使用したオレンジワインです。師匠であるドメーヌ・タカヒコの曽我さんのフラッグシップがピノ・ノワールに対して、山中さんはピノ・ノワールの突然変異種として生まれたピノ・グリのみを追求しています。

成澤:

山中さんのワインはいずれも凡庸なワインがないので、ソムリエの立場からはどんな料理にペアリングで合わせようか楽しみが広がります。

島田:

今ではレストランでペアリングを楽しむことができるようになりましたが、いつからペアリングという概念が生まれたか覚えていますか。

神田:

以前まではプリフィックス※3で、お客様がワインリストからワインを選ぶことが主流でした。しかし、ここ5年〜10年ほどの間、レストランのシェフが自信を持ってお勧めするコースに合わせように、レストランのソムリエがワインを提案するペアリングが登場してきたように記憶しています。青山のL’AS※4が先駆けでペアリングの流れを作ったような印象があります。

※3 プリフィックスとは…お客様がメニューの中から、お客様自身で好きなメニューを選択して組み合わせることができるコースメニューのこと

※4 南青山にあるフレンチレストランL’ASの詳細はこちら

檀原:

レストランでペアリングを楽しむ際には、次の料理やワインの組み合わせなどを想像しながら食事をするのが楽しいですよね。またその想像をどのように裏切ってくれるのかを期待してしまいます(笑)

神田:

ソムリエもやりがいを覚えると思います(笑)普段は職種柄、フランスワインをペアリングで取り扱うことが多いので勉強のためにも質問させていただきたいことがあります。

最近、注目している産地はどこですか
青木:

オーストラリアの中でも、ギップスランドやマーガレットリヴァーなど冷涼産地が温暖化の影響を上手く利用してクリーンでナチュラルなワインを生産しているので注目しています。世界的に需要が高まり、価格も高騰している「ピノ・ノワール」「シャルドネ」を使ったブティックワイナリーには特に着目しています。

島田:

私は、今年の実体験からご紹介させていただきます。北海道小樽市にあるOSA WINERY(オサワイナリー)※5です。北海道の小樽市が発祥とされる固有品種「旅路」を使用したワインは、塩味とオイリー感が独特でとても美味しかったです。ヨーロッパワインに似せて作ったワインではなく、その土地に根付いている食文化、北海道の小樽市で言えば「寿司」「ホタテ」は、とてもこのワインに合いました。このように土地に合わせた日本ワインがもっと生産され、認知されてほしいなと願っています。

※5 北海道小樽市にあるOSA WINERY(オサワイナリー)の詳細はこちら

神田:

近年、ローカル・ガストロノミー※6もトレンドなので流石は「ミス・ワイン」。その役割を体現されている素敵な実体験だと思います。

※6 ローカル・ガストロノミーとは…その地域の風土や歴史、文化などを料理として表現すること

檀原:

私も勉強するという意味で、南アフリカのワインに注目しています。理由としては、ニュージーランドワインが今ぶつかっている壁を先に克服した産地として、参考のためにも飲む機会を増やしています。南アフリカワインはデイリーワイン(シュナン・ブランやピノタージュ)が認知され、そこから高価格帯(5,000円以上)のワインも受け入れられています。ニュージーランドは、デイリーワイン(ソーヴィニヨン・ブラン)が高く評価されていますが、まだまだ高価格帯(5,000円以上)のワインが認知されていないので、そこを脱却した南アフリカからヒントを得るためにも注目しています。

成澤:

私はカナダに注目しています。今まではクール・クライメイト※7な印象が強かったですが、そこから温暖化の影響もあり力強さが加わってきて、エレガントさと力強さを持ち合わせた秀逸なワインが生産されています。今まではアイスワインが有名でしたが、上質なカベルネ・フランの産地としても知られていますし、テロワールや味わいの多様性もあります。そんなカナダワインは、和食との相性の良さも発揮するので、今後日本でも見る機会が増えていくのではないかと期待しております。

※7 冷涼地域で栽培された特徴を持つワインのこと

加藤:

シャルドネとピノ・ノワールの世界的な需要が高まる中、私はフランスに代わる産地に注目しています。個人的には、チリ最南端マジェコ・ヴァレーのトライゲンや2018年にAVAに認定されたソノマコーストの南部ペタルマ・ギャップは、その最有力候産地だと思っております。最近、信濃屋でも販売したBaettig(ベティッグ)※8はニューワールドのピノ・ノワール&シャルドネとしては突出した実力を見せており、ブルゴーニュのワインを好きな方でも十分に満足してもらえる味わいだと思います。

※8 Baettig(ベティッグ)の詳細はこちら

神田:

ありがとうございます。やはり立場の違う方々からお話が聞けると勉強になります。私が主に扱っているフランスワインの中でも近年、細分化が進んできているように感じています。今では人気産地になりましたが「ジュラ・サヴォワ」に続くように、フランスの概念を超えるワインを造る生産者が多くなってきました。「アルザスでシラー」を植える生産者もいますし、フランス外で学んだ生産者が伝統と革新を融合させ、素晴らしいワインを造っています。日進月歩の進化なので、日々勉強を欠かせません。

ドメーヌ・タカヒコの曽我 貴彦氏の下で2年間(2014~2016)栽培と醸造を研修した山中 敦生(ヤマナカ アツオ)が2016年春から独立し、北海道余市郡余市町登町の標高50m前後に位置する約3ha(栽培面積は1.5ha、5,000本)の畑でピノ・グリのみを栽培する小さな農園兼醸造所。

山中 敦生プロフィール

茨城県古河市出身。早稲田大学在学中にスノーボードの魅力に取り憑かれ、スノーボードインストラクターの資格を取得し、北海道内のスキー場で働き始める。シーズンオフに派遣でリゾート地のレストランで働いていた際、ワインを扱うレストランに配属されたことをきっかけにワインに傾倒。ソムリエの資格を取得し、畑ごとに違うワインの特性にますます興味をいだき、自分でブドウを栽培したいとまで考えるようになる。縁があってドメーヌ・タカヒコの曽我 貴彦氏の元で2年間の研修を受け、2016年に小さな醸造所を持つ農家として独立。今後は自然と共に歩みながら、北海道の四季を表現できる農家としてワインを醸造していくことを目指している。

Domaine Mont(ドメーヌ・モン)山中 敦生氏のインタビュー記事はこちら